カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「全部出して、最初からやってみたら? もうすぐお姉ちゃんになる子は、すぐにあきらめないと思うな」
「……はぁい」
ふくれっ面のまま、それでも素直に、清香ちゃんはリュックから中の物を取り出し始める。
それを眺めながら、あれ? と、直前の会話を巻き戻す。
「ねえ、清香ちゃんがもうすぐお姉ちゃんって……」
すると、美弥子がはにかむように微笑んだ。
「うん、最近ちゃんとわかったばかりなんだけどね」
わ、おめでただ!
「そうなんだ、おめでとう! あぁそっか、だから土曜の飲み会、ずっとウーロン茶だったのね」
納得して、なるほどと頷いた。
「一人でも大変なのに、どうなることやらだけどね。慎ちゃんがすごく喜んでくれてるし、がんばろうって。清香もね、お姉ちゃんになるってわかったら、急にはりきっちゃって」
くすくす笑いながら清香ちゃんを見つめる美弥子の目は、温かな愛情にあふれていて。
私が知っている彼女とは、違っていた。
母親っていうのは、みんなこんな目をするんだろうか。
美弥子には、頼もしい旦那様と可愛い娘がいて。
さらに2人目の天使までやってくるというのに。
私は……——
密かにこぼす嗤いは、自分でも自覚するくらい、醜い。
あふれそうになるものを、ぐっと押し戻した。
ダメだなぁ、私。
美弥子にまで嫉妬しちゃうなんて。
気持ちを落ち着けようと、窓の外へとぎこちなく顔を向けた。