カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「何も……聞かないの?」
「聞いてもいいなら聞くけど。でも、無理には……ていうか、聞けないな。飛鳥のそんな顔、見ちゃったら」
美弥子は静かに、自分のカップに口をつけた。
「今日、泊まっていくでしょ?」
「……いいの?」
「当たり前じゃない」
微笑まれて、私はうつむいた。
「ごめん……自分でも、何が起こってるか……わからなくて……混乱してて」
「大丈夫。ゆっくりしてって」
そして、「だいたいね」って私の頬をむぎゅうっとつまむ。
「い、いひゃい……」
「飛鳥はね、いつも一人で頑張りすぎなの。仕事でもなんでもね。たまには周りを頼ってもバチはあたらないよ?」
「……あ」
——こういう時は、頼っていいんだよ?
——僕は、君の恋人なんだから。
あぁ……どうして私は。
こんな時にさえ、彼を、彼の言葉を、思い出してしまうんだろう……。
ダムは決壊。みるみる、視界が潤み始める。
「飛鳥?」
「ごめっ……ちょっと、洗面所借りるね」
顔を伏せるようにして、急いで立ち上がった。