カボチャの馬車は、途中下車不可!?

『飛鳥、違うんだ。ちゃんと説明させてほしい』

「ねえ、答えてよ。全部嘘だったわけ?」

名前も素性も。
嘘だったの?

私は、騙されていたの?

『嘘じゃないっ……御曹司って言ったのは——』
「そんなことどうでもいいっ!」

そばを通りかかったカップルが、ギョッと飛び上がった。

「あなたが大富豪だろうがニートだろうが、そんなことどうでもいいの! 大事なのはそこじゃないでしょ!?」

言ったじゃない……
「好き……って……、あいし、て……あれ全部……っく……」

押し殺してた何かが、あふれ出す。
あふれて、こぼれて、流れ出す。

どうして好きだなんて言ったの?
どうしてキスしたの?

どうして抱いたの?
どんな気持ちで……


——うわー修羅場? 
——かわいそー……

小声で交わされる会話が、空々しく耳元を通り抜けていく。


『飛鳥、聞いてくれ。僕は——「本日は、サンシャイン水族館に」』

「ご来館いただきまして、誠にありがとうございます」


館内アナウンスだ。
もうすぐ9時だから……あぁ閉館か。
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