カボチャの馬車は、途中下車不可!?

——Good morning, my sweet angel.

「ん、おはよ……」

——何、そのカワイイ顔、誘ってるとしか思えないんだけど。

「何言って……」

——早く起きないと、キスするよ?
——キス以上のこと、しちゃうよ?

「だめ……ライアン……」


無意識に、もぞもぞってシーツの上に手を滑らせた。
けど——

いつも握り返してくれた、大きな手にはどこまでいってもたどりつけなくて。
代わりに、あっという間にベッドの端から飛び出してしまう。


ここは、どこ?


水底へ沈んでいた体が徐々に浮きあがるみたいに、意識が戻ってきて。
軽い混濁の中、薄く瞼を開ける。

そこで見つけたのは、優しい翡翠の双眸ではなく。
朝日が照らす、見慣れない白い壁。

あぁ……そうだ。
押し寄せてきた昨日の出来事をシャットアウトするみたいに、きつく目を閉じた。

夢だったらよかったのに。
全部夢で。
目が覚めたら、ライアンが「おはよう、飛鳥」って笑いながらキスしてくれて……

でも。
目を開ければ、そこはどこまでもビジネスホテルの味気ない一室。

誤魔化しようのない現実に打ちのめされて、なかなか動けなかった。
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