カボチャの馬車は、途中下車不可!?

目を閉じていたら、まるきり日本人と話してるみたい。
一音のよどみもなまりもない、完璧な標準語だ。
ハーフっぽくも見えないし、完全にヨーロピアンだと思うのに……。

「マユミは何か飲む?」

「いえ、私は……結構です」

「そう?」

彼の視線から解放された私は、ようやく少し冷静さを取り戻して。

インポートソファが小さく見えてしまうくらい恵まれたスタイルの彼を、改めてじっくりと眺めた。

着ているのは……ハイブランドであることは間違いない。
目を引くのは配色だ。

ライトベージュのスーツに、ピンクのシャツ、ブラウンのタイなんて。
日本のビジネスマンじゃ、なかなかできない組み合わせだと思うけど、彼はそれを完全に自分のものにしてる。

私だって、曲がりなりにもマスコミ業界の端っこで働いてる人間だし。
モデルなり俳優なり、いわゆるイケメンって呼ばれる人種にはそこそこ慣れてるつもりだったけど。

彼は……なんていうか別格、っていう気がした。

頬に影を落とす金糸のようなまつ毛や、メニューを繰る物憂げな指の動きにまでフェロモンがあふれてるっていうか。

微粒子のようなキラキラしたオーラが全身を取り巻いていて。
彼の周囲だけ、明るく光っているような……

見れば見るほど、本物の王子様みたいだ。
いうなれば、歩くファンタジーってところ?
ラムちゃんあたりが見たら、悲鳴上げて悶絶しそう。
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