カボチャの馬車は、途中下車不可!?
黒髪美女を思い浮かべた私に、彼は首を振る。
「チェン様はもちろんですが、そのほかにも……何人か。それも毎回違う方を」
「っ……違う人、ですか」
覚悟はしてたつもりなのに。
心はあっという間に、聞きたくないと悲鳴を上げ始める。
違う、違う。
それは彼じゃない、と——
「中には、高額なお金を取られた女性もいるようでして」
「え……お、おかねっ?」
予想外のワードに、声が裏返った。
「警察に届け出てはと申し上げたのですが、自分の意志で投資したのだと否定されまして。こちらとしてもそれ以上は追及できず……その方のお姿は、それ以降拝見しておりません」
ハッカーじゃなくて……詐欺なの!?
どういうことよ……
ぐらりと、視界が揺れた。
「真杉様っ大丈夫ですか!?」
慌てたように腰を浮かせた都築さんに平気だと頷き返して、ソファに深く座りなおした。
もしかしたら彼は、私の想像以上に遠い存在だったのかもしれない。
ジクジク疼く生傷を抱えたような胸の内で、そんなことを思った。