カボチャの馬車は、途中下車不可!?

カウンターではまだ都築さんがわめき散らしていて、みんなの注意はそっちに引き付けられてる。


外に通じるドアは……カウンターとは反対方向。
しかも、少し開いてるじゃない。


気づかれずにあそこまで行ければ、なんとかなるかも。

幸い、ソファの座面はそれほど高くないし。これなら……

私はゆっくり体をひねって。
上半身をソファから降ろした。

下半身も重力に任せて……ぽすっと床に落とした。
「っ……!」

縛られた紐が、ギリッて食い込む。
歯をくいしばって、洩れそうになる声を堪えた。

大丈夫。

ドラムみたいに鳴り響く鼓動を全身で感じながら、繰り返し唱える。

大丈夫。
落ち着いて。
落ち着いて。

少しずつ、ミノムシみたいに這いながら、ドアを目指す。
たった数メートルの距離が、恐ろしく遠い……。
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