カボチャの馬車は、途中下車不可!?

フロアに連れ戻されて、中央の椅子に座らされた私は、ようやくさっき都築さんと言い合っていた男——河部弘を見上げていた。

細い目に、面長の顔。
肌はカサついて、隈の張りついた目元は皺が寄っていて。
なんだかひどく、生気というものを感じない男だった。

「あんたもさぁ、バカだよなぁ。紗英に言われただろぉ? あのガイジン、すぐにフッとけって。その通りにしてりゃ、死なずにすんだのに」
ゲラゲラ笑いながら言って、真正面の椅子に腰かける。

「あ……ああんたたち、一体なんなの? 何やったのよ?」

河部は答える気がないのか、椅子をギコギコ鳴らして揺らしながらニヤつくばかり。

ぐるりと周囲を見渡した。
ボトルに抱き着いたままカウンターに突っ伏す都築さん、そして……ソファでくつろぐ青山さんへ。

数か月前、私の前で助けてくれとむせび泣いていた彼女はどこにもいなくて。
磨き上げた爪に見惚れるその表情には、余裕すら感じられる。

「青山さん……これどういうこと? 実家に帰ったんじゃなかったの?」

言うなり。
「ぶっ!」と青山さんが吹き出した。

「あんな嘘、まだ信じてたんですかぁ? ちょーウケるんですけど!」

「う、嘘……?」

まさか……

「全部、嘘だったの? 婚約者と喧嘩したとか、勢いでアプリに——」
「嘘ですよ?」
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