カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「おい紗英、そんなにペラペラしゃべんなよ」
「はぁ〜い」
ぺろりと舌を出した青山さんを一瞥して、河部が立ち上がった。

「さぁてと、オネーサン。ここまで聞いちまって、まさかオウチ帰れるとは思ってねえよなぁ?」

そして、カウンターの中をごそごそ探っていたかと思うと、ニヤリと振り返る。
「あんたはさ、自殺するんだよ」

「……は?」

「男に縁がない、仕事オンリーの干物女子。ストレスたまりまくり。ついに出会い系アプリを使って、“新ビジネス”に手を出す。ところが警察が捜査中ってことを知って、逃げきれないと観念して自殺。どうよ、この設定? 俺、ショーセツとか書けちゃうんじゃね?」

くくっと含み笑いを漏らしながら、小さな白いケースを手に、近づいてきた。

「あぁ心配しなくても、あんたのパソコンの中に、客取ってたって証拠、たっぷり残してやったから。警察には後でちゃんと届けてやるよ?」

「あのファイルが……その証拠なのね?」

「まぁね。どっかのアホが、コップ倒すとか間抜けなコトしなきゃ、あんたに疑われることもなかっただろうけどね」

軽い口調とは正反対の、不快そうな目でフロアの一点を見やる。
その先で、「す、すんませんっ」と小さな悲鳴が起こった。

「ま、今更どうでもいっか」
ケースをパカッと開いて、細い何かを取り出す。


……注射器だ。
< 475 / 554 >

この作品をシェア

pagetop