カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「おい紗英、そんなにペラペラしゃべんなよ」
「はぁ〜い」
ぺろりと舌を出した青山さんを一瞥して、河部が立ち上がった。
「さぁてと、オネーサン。ここまで聞いちまって、まさかオウチ帰れるとは思ってねえよなぁ?」
そして、カウンターの中をごそごそ探っていたかと思うと、ニヤリと振り返る。
「あんたはさ、自殺するんだよ」
「……は?」
「男に縁がない、仕事オンリーの干物女子。ストレスたまりまくり。ついに出会い系アプリを使って、“新ビジネス”に手を出す。ところが警察が捜査中ってことを知って、逃げきれないと観念して自殺。どうよ、この設定? 俺、ショーセツとか書けちゃうんじゃね?」
くくっと含み笑いを漏らしながら、小さな白いケースを手に、近づいてきた。
「あぁ心配しなくても、あんたのパソコンの中に、客取ってたって証拠、たっぷり残してやったから。警察には後でちゃんと届けてやるよ?」
「あのファイルが……その証拠なのね?」
「まぁね。どっかのアホが、コップ倒すとか間抜けなコトしなきゃ、あんたに疑われることもなかっただろうけどね」
軽い口調とは正反対の、不快そうな目でフロアの一点を見やる。
その先で、「す、すんませんっ」と小さな悲鳴が起こった。
「ま、今更どうでもいっか」
ケースをパカッと開いて、細い何かを取り出す。
……注射器だ。