カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「何やってんだよ、早く行くぞ」
ぶっきらぼうな声がして、腕をぐいっと後ろへ引かれた。
そこにいたのは……
「い、伊藤、くん?」
お花屋さんでウェイターで——あの謎の男。
「ぼさっとしてんな」
そのまま連れて行こうとするから、慌てて両足に力を入れた。
「早く警察を……ねえ、彼を助けてっ! あんなのっ……し、死んじゃうっ……私のせいでライアンがっ……」
こっちがパニック状態で叫んでいるというのに——対する伊藤くんは、面倒くさそうに舌打ちするだけ。
「あんたさぁ、ちゃんと自分の目で見てみろよ。オレはむしろ、相手に同情するね。お気の毒に」
は——?
それってどういう……
聞こうとした私の鼓膜に、グワッシャン! ってひと際大きな音が突き刺さった。
振り向くと、男の身体がカウンターに突っ込んだところだった。
ライアン、じゃない。河部の仲間だ。
衝撃で棚からボトルが次々落下、けたたましい音を立てて砕け、滝のようにお酒をまき散らしていく。
反射的に視線を移動させた私は——
「え、えぇっ!?」
口を開いたまま、カチンて固まってしまった。