カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「やめてっ!!」
気づいた時には、勝手に体が動いていて。
振り上げた腕へぶつかるようにして、しがみついていた。
「……放してくれないかな、飛鳥」
「い、嫌、お願いだからやめて」
何度も首を振ると、苛立たし気な視線が降ってくる。
「もう忘れたの? 自分が何をされたか」
「忘れたわけじゃない。もちろん、許せないけど……でも私は無事だったんだし、もう十分でしょう?」
「お願いだから」って、祈るような思いで、彼を見つめつづけた。
平和ボケしたのほほんOL。そうかもしれない。私の考えは、甘いのかもしれない。
でも、それでも私は……どんな理由があったって、彼が人を傷つけるところなんて見たくなかった。
都築さんの不規則な呼吸が響く中、どれだけ見つめあっていたんだろう?
ふぅっと、ライアンの唇からかすかに息が漏れた。
その腕から、力が抜けて。
同時に都築さんは床に落ち、ゲホゴホって体を波打たせながらせき込んだ。
「あり、がとう……やめてくれて」
ホッとしてお礼を言うと。
彼は口元を片手で覆い、顔をそらした。
「ほんと、僕は弱いな……君のおねだりに」
その表情からは、さっきまでの冷淡さは消えていて。
さらにその頬が、かすかに紅く染まっていることにも気づいて。
とくんとくん、と心臓が覚えのある音を立て始めてしまい、慌てて彼から視線をはがした。