カボチャの馬車は、途中下車不可!?
あんな女……そうか、確かに、島田君に受付の南香織ちゃんを紹介したのは私だ。
私だけど……
「仕方なく次の男探そうと思ったら、どこ行っても言われるのよねっ。『今日は真杉さん一緒じゃないの』、『真杉さんの意見も聞いてみたいなぁ』、『真杉さんとやったあの仕事はおもしろかったなぁ』……。クライアントもスタッフもみんな、真杉さん真杉さんってそればっかり! 誰もあたしのことなんて見てくれないっ!! みんなあんたに邪魔されるのっ!! だからあんたなんて、どうなってもいいって思ったのよっ!」
……絶句、してしまった。
もしかして彼女、そんなことで私のこと……?
なんかその……いろいろ言ってやりたいことはあるけど。
ありすぎて、適当な言葉が出てこない。
「でもね、誰にもあたしのこと訴えたりなんかさせないわよ。だってあたしは何も悪くないんだから! 被害者なんだからねっ! ヒ・ガ・イ・シャ!」
きゃはははははっ……
寒々しいほど奇妙に浮かれた笑い声だけが、淀んだ空気に紛れて消えていく。
彼女の言う通りなんだろう。
調べても、彼女は安全圏にいて……罪を問うことはできなくて。
きっと何を言ってももう、彼女には届かない……
怒りと苛立ちと虚脱感。
行き場所をなくして荒れる気持ちを静めようと、深く息を吸い込んだ時——私の体は重力を無視して、ふわっと浮きあがった。
「ひゃっ……」
ライアンに横抱きにされてることを知って、焦りまくって足をばたつかせる。