カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「ちょ、っ……なに、お、おろして!」
「おとなしくして。ガラスが飛び散ってて危ないから」
……うぅ。
足の踏み場もないほど散らかった床にチラリと目をやり、仕方なく口をつぐんだ。
小さく笑ったライアンに抱かれたまま出入口に差し掛かって。
壊れたおもちゃみたいに体をびくつかせ、まだ笑い続けてる青山さんとすれ違う。
「君の勝ちだよ。確かに僕たちは、君を追い詰めるだけの証拠は持ってない」
「ふ、ふは……ははははっ……そう、負けを認めるのね! あっははははは……」
嘲りにも揺らぐことのない厳しい視線を前に据えたまま、ライアンは口を開いた。
「でも、最後に一つだけいいかな」
「ふ、ふ、何よっ……?」
「僕も飛鳥マジックほどじゃないけど、たまに『見える』んだよね」
「……は?」
「断言してもいい。君はこの先ずっと、幸せを見つけることはできない。そうやって全部人のせいにして、拗ねて僻んで、いじけている限りはね」
「なっ……」
「女性に生まれたことを、ご両親に感謝するといいよ。僕はフェミニストだからね、今回は見逃してあげる。でも——」
言葉を切ったライアンの目に、またあの、凍てつくような色が走った。
「2度目はない。今度飛鳥に近づいたら、容赦しないから」