カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「真杉さんっ! おはようございます」
「あ、おはよー」
「真杉さん真杉さんおはよーございますっ! あ、それ新しいバレッタですか? お似合いですねっ!」
へ?
「えっと……どうも」
「あ、真杉さんだぁ! おはよーございますぅっ! 今日もよろしくお願いしまーす! またうちの部に顔だしてくださいね! おいしいコーヒー豆、見つけたんで!」
……は?
「あ、うん……」
「おはようございますっ! 真杉さんて、イタリアンお好きですか? 今度ご一緒にランチどうですか!?」
何? コレ。
「あ……そう、ね……」
次から次へ。
通勤途中のOLたちに親し気に声をかけられて、私はぽかん。あっけにとられた。
見覚えはあるから、うちの社員のはず。
ええと、確か……
記憶を探る。二人は総務だ。経理課と秘書課。それからマーケティングと制作の子、だったかな……
営業っていう仕事上、社内のコネクションも重要だから、できるだけ顔を売るようにはしてるけど。
ランチを一緒に、とかそんな関係じゃないはずなんだけど。
にわか芸能人みたいな扱いに首をひねりながら歩いていると、西新宿のビル群が空を横切るように迫ってきた。