カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「で、何食べたい?」

ハッと我に返ると、再び無邪気そのものって顔に戻った彼が、にこにこと私を覗き込んでいた。


な、なんなのこの人……?

その豹変ぶりに、しばしあっけにとられていた私だったけど——
次第に、ふつふつって体の奥から怒りと闘志がわいてくるのを感じた。



……おあいにく様。

三十路女子をなめんなよ。
ダテに32年生きてないんだから。

あなたの思惑通りになんていくもんか。


「……お任せします」


女がみんな、あなたになびくと思ったら大間違いなんだから!


「散々誘いなれてるんでしょう? 同じコースでかまいませんよ。新しいプラン考えるのも面倒でしょうし」


淡々と、無関心を舌に貼り付けるようにして言ってやった。

夕食だけ、っていうなら、いいわよ。行ってあげる。

ミシュランの星付きフルコースでも奢らせてやろうじゃないの。
御曹司っぽいバカ高いやつを。
でも、絶対そっちのペースには乗ってやらないんだから。
食べたら、誤解しようのないくらい完璧に終わらせてやる。

自分がフラれるなんて一度たりとも考えたことないような、世間知らずの王子様に、貴重な人生経験積ませてあげようじゃない。
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