カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「え……えぇっっ!」
のけぞる私を見て。
伊藤くんは、「なんだよ、その反応」って、思いっきり眉をひそめたまま、向かい側へ腰を下ろした。
「ごめん。でもなんか……花屋さんとは別人で……すごいテクニックだなぁと」
ウェイターとも違う。
あの時は、そうだ、肌ももっと浅黒かった。
今は、色白で通るくらいだし……眼鏡のブリッジを押し上げる手慣れた仕草や、レンズ越しのストイックな視線……まるで外資系のエリート社員か青年実業家のようだ。
カメレオン俳優って最近聞くけど、彼もそんな感じかな。
へぇえ、とマジマジ見つめてしまった私に、伊藤くんは居心地悪そうに咳払いした。
「感激してるとこ悪いけど、デフォルトはこっちだから」
「え? デフォ……あ、そうなの?」
パチパチ、瞬きしていると。
「で?」って促された。
「何がそんなにおかしかったんだよ、さっき?」
さっき……?
思い出して、私はまた、唇を綻ばせた。
「ライアンとここで会った時のこと、思い出してたの」
「あぁ」とつぶやいた彼は、私に倣うように周囲に視線を飛ばした。
「この席だったな。そういえば」