カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「うん。あの時の彼、リッチなプレイボーイってアピール、すごかったなぁって」

散々私を揺さぶった、思わせぶりな言葉や態度……

「あれは全部、マユミについて探るための演技だったのよね?」

伊藤くんのように、彼の本来の姿も、実は全然違うんだろうか?
あの優しさや甘さも全部……

「いや」と、伊藤くんはおかしそうに肩を揺らしながら、首を振った。

「目的はそうだけど、全然演技じゃない。あいつの女好きは昔っから有名だし。今回の『仕事』にも、そのせいで適任だって選ばれたくらいだから」

あ……そうですか。
そこは、まんまなわけね。

無意識に、視線も肩も、落ちていた。

そりゃあの容姿だし、女が放っておかないか。
胸の奥に横切った痛みに気を取られ、私は続く言葉を聞き損ねた。

「だから驚いたんだよな。まさかたった一人の女のために……」
「……え? 何?」

聞き返すと、伊藤くんははぐらかすように目を逸らし、アタッシュケースからノートパソコンと携帯を取り出した。
私のものだ。

「遅くなったけど、これ返しとく。問題のファイルやアプリは全部削除済みだし、この件が警察に漏れることはないから、安心していい」

「……わかった。ありがとう」
どうして漏れることはないのか、たぶん聞かない方がいいのよね?
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