カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「それから、これも」
ついでのようにさりげなく、テーブルに置かれたのは1枚の紙きれだった。
「何、これ?」
手に取った私は、ギョッと目をむいた。
これって……小切手よね。なんか、ゼロがいくつも見えるんだけど?
え、ちょ……いくら!?
「巻きこんじまったから、迷惑料って感じかな。500万でたりなきゃ、もっと用意するけど」
「い、いらないわよこんなもの!」
首を振って突き返したのに、伊藤くんは上半身を引き、受け取りを拒絶した。
「金なんて、あって困るもんじゃないだろ。素直に受け取っておけよ」
そんなこと言われても……
戸惑いながら、手の中のそれへ視線を落とす。
なんだか、嫌だった。
私たちの出会いが、仕組まれたものだったとしても。
2人で過ごした時間や気持ちまで、そうだったと、思いたくなかった。
お金で終わりにできてしまうような、そんな関係だったなんて。
彼の方はわからないけど、少なくとも私は……——
気持ちはすぐに決まり。
一気に、その紙を真ん中で裂いた。
「……いいのかよ、それで?」
頷いた私へ、
「ふぅん。ま、あんたの金だから、どうでもいいけどな」
どこまでも無関心に言い、立ち上がろうとする。
「待って!」
とっさに叫んだ私は、彼のジャケットの裾をつかんでいた。