カボチャの馬車は、途中下車不可!?
う。やっぱりオミトオシだったわけね。
赤くなった顔を隠すように視線を泳がせながら、別の話題を探した。
「な、内通者が都築だって、わかったのはどうして?」
「あぁそれは……あんた、ここのロビーで都築と話しただろ」
「え……と、いつの話?」
「シンシア……中国人の女と話してるあんたに、都築が近づいて。覚えてないか?」
あぁ……あの時ね。
と、思い出してから、首をひねった。
「どうしてそんなこと知ってるの?」
「監視カメラに映ってたからな。その時都築に言われたこと、覚えてるか?」
もちろん……忘れるわけない。
ネガティブな気持ちが声に出ないように苦労しながら、重たい唇を動かした。
「彼女が、プレミアムフライデーの夜、ライアンの部屋に来たって言ってた。その夜って、最初彼は私の部屋にいたんだけど、電話がかかってきて——」
「慌てて帰っていった、だろ?」
なんなく奪われたセリフに、目が丸くなってしまう。
「どうして……それ……」
「その電話、かけたのオレだから」
「……は?」
話が見えていない私へ、伊藤くんは噛んで含めるような調子で続けた。
「あの夜ライのヤツ、ミーティングあることすっかり忘れてあんたのとこ出かけちまって。だから大急ぎで呼び戻したんだ」
み、ミーティング? 仕事関係、ってこと?
シンシアは、部屋に……行ってない?
「だ……だって、あれは……思いっきり夜だったけど?」