カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「だいたい、想像はついてんじゃないの?」

再び眼鏡をかけ、調子を取り戻したらしい彼に上から口調で言われて、うっと口ごもる。

そりゃもちろん……散々考えた。
頭が痛くなるくらい、乏しい想像力を振り絞って考えたわよ。

私の予想は、こうだ。
「……ホテル側に雇われた……探偵、かな、と」

恐る恐る、でもそれなりに外れてはいないだろうと密かな自信をもって口にすると。

「ぶっ」とそれまでの取り澄ました表情を崩して、伊藤くんは大爆笑。
「いいなそれ、開業するか」

体を折って延々とウケてるから、なんだかカチンとしてしまう。

「ちょっと! こっちは真面目に言ってるんだから、ちゃんと答えてよ!」

ムッと声をあげた私を見て、彼はようやく笑いを収めると、「まぁいいか」って頷いてくれた。
「口止めは、されなかったしな」

「え……誰から?」

指がすいっと伸びて。
テーブルの上に置かれていたドリンクメニューを引き寄せると、ある一点をトンと指した。
覗き込むと……シェルリーズホテル(Ciel Lee’s Hotel)の刻印——その、中央部分だった。

「なんだ、やっぱりホテルから頼まれたんでしょ?」

「の、親会社。リーズグループって知ってるか?」
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