カボチャの馬車は、途中下車不可!?
26. 再会

それから私は、以前と変わらない日々を送ってる——……っていうのは、ちょっと嘘かな。


前にも増して仕事にのめり込んでるって、自覚はあるから。


深夜残業、休日出勤もこなして、提案書を作り、新規顧客を回り。
プライベートの時間は、勉強漬け。

そのかいあって、営業成績は短期間でうなぎのぼり。
初の女性役員目指せば? なんて周りからは持ち上げられてるけど……あまり喜べない。

だって私が頑張っているのは、売り上げを伸ばしたいとか、上を目指したいとか、そんな野望のためじゃないから。


ただひたすら、一人の時間を減らしたいから。
消えない面影を想って眠れない夜が、怖いから。


いい年した大人のくせに、いつまでも何ウジウジしてるんだろう。
失恋だって経験済みのはずなのに……

なんだか今回は、今までと違ってて。
いろんな感情が、うまく処理できない。


忘れなきゃ。
早く、忘れなきゃ。
忘れて前に、進まなきゃ——

それを呪文のように唱え、鬱々とする気分をぶつけるようにさらに仕事に打ち込み……そうして気が付けば、2か月という時間が過ぎていた。
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