カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「飛鳥さんっ! そろそろ出ないと間に合いませんよ?」
「うん、あとちょっと……あ、ラムちゃん先に行ってくれてもいいよ?」
資料を手にパソコン画面とにらめっこしながら私が言うと。
「ええっ嫌ですよぉ! 一人で行くなんて!」
ラムちゃんがドタドタって、駄々っ子みたいに足を踏み鳴らす。
おいおい、いくつだ君は。
「新条部長ぉっ何か言ってくださいよ! 最近飛鳥さん、仕事しすぎですって!」
あ、部長に泣きつくとかっ! それは反則——
「真杉」
う……ぅ。
いつもより低めの声に、未練がましく動いていた手がようやく止まった。
「もう切り上げろ。別にそれ、急ぎじゃないだろ」
「……はい」
部長命令は絶対だ。
諦めて帰り支度を始めた私を、ラムちゃんが嬉々として見守ってる。
「真杉」
「はい?」
顔を上げると、意味ありげに目を細める部長がいた。
「明日は休みだし、ゆっくり楽しんでこいよ」
「はぁ……仕事に行くんですけど?」
「やっぱりお酒でますかね! ツマミくらい出ますかねっ!」
「だから仕事だってば……」
はしゃぐラムちゃんをなだめて促しながら、私は「じゃ、行ってきます」と全員に挨拶して、営業部のフロアを後にした。