カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「さてと。まだ時間あるし、まずはそれをなんとかしないとね」
腕時計をチラリと確認してから、ライアンさんは軽く頷いた。
「それ?」
彼の視線をたどって……自分の格好を見下ろす。
グレーのパンツスーツ。
機能性と女性らしいシルエットを備えた、お気に入りブランドのものだけど。
「デート向きじゃないよね」
ばっさり言われてしまい、私は眉を寄せた。
そりゃそうよ。だって……
「デートするつもりは、なかったので」
むすっと、でも正直に言うと、彼は軽く目を見開いた。
そして再び、くくくっと、笑み崩れる。
「いいね。ほんとにいい。それくらいの方が、落としがいがある」
さらりと言って、立ち上がる。
お、落とっ……?
「ライアンさん、ちょっと待っ……!」
ふかふかの絨毯にヒールを取られそうになりながら、後に続いた私の目の前。
彼の足がいきなり止まった。
思わず、「ひゃっ」ってつぶれた声をあげて、背中に激突してしまったじゃない。
なな、何よいったい?