カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「うっわぁ栞ちゃん、めっちゃかわい〜足、ほっそ! 飛鳥さーん、あたし、もっと近くで見てきてもいいですか!?」
「いいけど……サインねだるのはやめてね?」
「ラジャー!!」
身軽に駆けだした彼女を苦笑とともに見送ってから、視線を動かした。
誰か知り合いがいないかと思ったんだけど……
あ、いたいた。
ブースの一つで料理のチェックをしているらしいその人を見つけて、近づいていく。
「樋口さん」
声をかけると、手にしたバインダーをボールペンで軽くつついていた彼が、顔を上げた。
「あぁ、真杉さん!」
「ご無沙汰しております。本日はお招きいただきましてありがとうございました。ご盛会、おめでとうございます」
「ありがとうございます。なんとかここまでこぎつけられて、やれやれですよ。これが終わったら、いよいよ御社の料理コンテストですね」
「はい、ぜひうちとの仕事も、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ! 楽しみにしています」
「ええっと……大河原部長は、もういらっしゃってます?」
まだ見かけてないことを思い出して聞くと、「ええ来てますよ。ほら、あそこに」と、彼の視線が中央付近を指した。