カボチャの馬車は、途中下車不可!?

あのあたりなら、さっきも見たけど……? と、目を凝らして——ぽかんと大口を開けてしまった。

確かに、大河原さんはいた。
結城栞ちゃんと言葉を交わす重役たちの中に。
でもあれは……

「ほんとに……大河原部長、ですか」
自分の目を疑ってしまいながら聞くと、樋口さんがくすくす、おかしそうに含み笑う。
「白衣着てないと、わかりませんよね」

失礼だと知りつつ、頷いてしまった。
うん。
ピシッと高級スーツを着こなして背筋を伸ばした大河原さんは、ダンディな上流紳士って雰囲気で、申し訳ないけど、まるで別人だ。

「いつもああいう恰好、してくれればいいと思うんですけどね」
広報活動も楽なのに、と苦笑交じりに樋口さんが言った、その時だった。



うわっ——……
ええっ!

きゃぁあっ……



どこからともなく、どよめきが起こった。
次第にその声は、熱っぽい感嘆のため息とざわめきへ変わっていく。


栞ちゃんの方を見ているわけでもなさそうだし……
なんだろう?
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