カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「飛鳥さんっ!!」

こっそり会場から抜け出そうとしたんだけど——うぅ……捕まった。
ドアの手前で、ラムちゃんに。

「見ました? 見ましたっ? あれ、ライアンさんですよね!? なんで吾妻社長と一緒にいるんですかね!?」

「ええっと……カレントウェブの専務なんだって、彼」
彼女があの社長のファンであることを思い出しながら教えてあげると、ラムちゃんがぴょんっと飛び上がった。

「そうなんですか!? じゃあ今度一緒に仕事できますね!!」


「え」
全身が、痺れたように動かなくなった。

そうだ。もうすぐ始まる、オオタフーズとうちとの仕事。
仕切るのはうちだけれど、実際に制作するのはカレントウェブで……今後、何度も打ち合わせしていかなきゃならない。
顔を合わせる機会だってきっと……

その場面を思い描いて、ザっと目の前が暗くなり……
でもすぐに、違う違う、と想像を打ち消した。

だってほら、伊藤くん言ってたじゃない?
ライアンは今年中にも本社に、って……。
だからきっと、カレントウェブの方は近々辞めるってことよね?


「何してるんですか? 行きましょうよっゴアイサツ!」

腕を引っ張られて、ハッと我に返った。
「飛鳥さんっ会いたかったんでしょ? 忘れられないんでしょ?」

目を輝かせ、鼻息荒くして叫ぶ彼女に、「や、あの、私はいいから」って焦りながら首を振る。
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