カボチャの馬車は、途中下車不可!?
27. Fly
「君たちにはまだ紹介してなかっただろう? YKDの真杉飛鳥さん。真杉さん、こちらはカレントウェブプランニングの吾妻拓巳社長」
ものすごくレアであろう、上機嫌な大河原さんに紹介されて、私は慌てて頭を下げた。
「はっ……初めまして、YKD営業の真杉飛鳥と申します。お噂はかねがね……よろしく、お願いします」
「今度の料理コンテストを仕切る方ですよね? あれ、うちでも話題になってるんですよ。ご一緒できるのが楽しみです」
差し出された手を握り返しながら、ぎこちなく唇の端を持ち上げてその長身を見上げる。
魅惑的な微笑を浮かべた彼は、もう女子ならだれもが悶絶失神しそうなイケメンっぷりだったけれど。
今の私は……それどころじゃない。
ライアンが——いる。
ほんの数十センチの距離に。手を伸ばせば、触れられるところに。
でも。
心臓が口から飛び出しそうになってる私とは対照的に、彼は沈黙したままだ。
その意味がなんとなく飲み込めて——キンと心が冷えついた。
つまり彼は、私と初対面ってことにしたいのか。
「そしてこちらが、ライアン・リー専務」
知り合いだってことがバレたら、説明が面倒だから?
あれは『仕事』だったから?
だから、全部なかったことにするの? 私との全部、何もかも……