カボチャの馬車は、途中下車不可!?

それにしても……
30、かぁ。

彼の後ろについてラウンジを出ながら。
私はひそかに重たい息を吐いていた。

青山さんも、プロフィールに自分のコト、載せてるわよね。
個人情報は抜きにしても、年齢くらいは。
つまり彼は私のこと、青山さんの年——27だと思ってるってことか。

うわぁ……
不可抗力とはいえ、それって年齢詐称じゃないの。
しかも5年も! 

なんだか気持ち的に、ものすごくよくない……けど。

でもまぁ、仕方ないか。

彼だって御曹司っていうのは嘘だろうし。
そうよ! ここはお互い様ってことで。


湧き上がる罪悪感を振り切るように、私は足を速めた。


……今夜だけ。
数時間後にはもう、見知らぬ人に戻る。
真実なんて、どちらにとっても大した意味はないんだから。


◇◇◇◇

エレベーターに乗り、彼が私を連れてきたのは、下層のブティックフロアだった。
シャンデリアに彩られた、きらびやかなそこは、商業フロアと価格帯が違いすぎるせいか、着飾った女性たちが数人行きかうだけ。
驚くほど静かな空間をドギマギしながら進み、ひときわ広い店舗に招き入れられた。
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