カボチャの馬車は、途中下車不可!?
どうしたらいいんだろう、有無を言わせぬこの展開……
広すぎる試着室の中で一人、ため息をついた。
壁にかかっているのは、さっき彼が選んだドレス。
オフショルダーのタイトな膝丈ドレスで、総レース生地のせいか、シンプルなのに華やいだ雰囲気がある。
これを、着ろと?
そりゃ、この年になれば、フォーマルなドレスを着たことくらいあるけど。
(ほとんど友達の結婚式だけど!)
こんな鮮やかなブルーってのは、選んだことがない。
ワードローブにだって、1枚も持ってない色だ。
しかもこれ、かなり腰が絞られてて……入るんだろうか?
ファスナー壊れたりしたらどうしよう……
なんて、うだうだ考えていたら。
「いかがですか? お手伝いしましょうか?」
外から声がかけられた。
「大丈夫ですっ! もう少しです!」
なんだか監視されてるみたいだ。
「マユミ様、こちらも一緒にどうぞ。そのドレスに合いますよ」
カーテンの隙間から、シャンパンゴールドのクラッチバックとハイヒールまで差し入れられて。
これは腹をくくるしかないって覚悟を決めた私は、ジャケットを脱ぎ始めた。
……あれ、彼女、今私のこと、マユミって呼んだ?
ライアン、名前で呼んでたっけ?
ちらりとそんな疑問が頭をかすめたけれど。
着替えに集中して、すぐに忘れてしまった。