カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「に……似合う」
呆然と独り言ちて、鏡を凝視した。
派手すぎると心配したブルーは、びっくりするほど私の肌色によくなじんで、明るく引き立ててくれて、本当に似合っていた。
デコルテがぱっくり開きすぎてるのが少し気になるけど、サイズもドンピシャ。
初対面の女性の服、これだけぴったりのものを選ぶってどうなの?
……ま、贈り慣れてるってことだろうけど。
呆れながら、何気なくタグに目をやると……ヒッと、手が止まった。
素材やサイズの情報のみで。
どこにも、ね、値段が書いてないっ! 怖っ……!
◇◇◇◇
「まぁ! ほんとによくお似合いですわ」
試着室を一歩出た途端、満面の笑みを浮かべたスタッフに褒められた私は、さぁ次はと、ドレッサーの前へ案内された。
そしてようやく、彼女の仕事がこれで終わりではなく、メイクアップとヘアアレンジまで任されているのだと理解した。
「あ、あの……そこまでしていただかなくても……」
てっきり、メイク直し程度だと思っていたのに。
一旦すべてオフしてから、マッサージ、パックまで。エステ並みのケアが始まってしまい、私は心配になり始めた。
だって、この店に入ってからもう1時間以上経つのに、他のお客さんが入ってきた気配はない。
彼女はずっと私にかかりきりだし……
お店の経営大丈夫なのかなって下世話に考えてしまうのは、職業病かもしれないけど。
「ヘアスタイルはどういたしましょう? ご希望はあります?」
ぽんぽんとスポンジでファンデーションをなじませながら、彼女が聞く。
「いえ、特に……お任せします」
「では、アップにいたしましょう。その方が、お首周りの美しさが引き立ちますから」
「はぁ……あのぅ、ほかのお客さんの対応とか、いいんですか?」
控え目に聞いてみると、「あぁ大丈夫ですよ」とさらっと流された。
「今日はライアン様の貸し切りですから」