カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「男が女性を口説くために金を使うのは常識だろ。何も遠慮することなんかないのに。当然って顔して、受け取っておけばいい」

こ、このブルジョワめっ……
口説かれる気とか、全然ないから!
「そんな常識、いらないから」って、再度箱を彼に押しつけたんだけど——

「ふぅん……でもこれしてないと、君のデコルテ……」

意味ありげに言葉尻をぼかして、彼は私を舐めるように見た。

「相当男の目を引き付けることになるけど、それでもいいの?」

は!?

ギョッと目をむくと。

僕としてはその方がうれしいけどね。眼福って日本語あるよね、って。
意地悪く、唇の端を持ち上げ。
むき出しになった鎖骨を、するりと撫でていく。


ビクッと……全身が震えて。
たまらず、きつく目を閉じた。

確かにそれは……まずいかも。


「………つける」

負けを認めると、彼はくすくす笑いながら後ろへまわり、留め金をパチンと留めてくれた。
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