カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「う……わ……」
高級そうだな、と思った私のカンは、間違ってなかったらしい。
船内に入った途端、もう一度息を飲むことになったから。
深紅の絨毯が敷き詰められたロビーは、シェルリーズホテルに勝るとも劣らない、重厚なヨーロピアンスタイルの調度品で整えられていて、船の中だということを忘れそうなほどだった。
そこで談笑していたのは——多国籍のゲストたち。
民族衣装をまとう人から、ノータイのカジュアルファッションまで。
装いは様々だけど、遠目からもわかる仕立ての良さとシルエットは、おそらくかなりの高級品に違いなくて。
とにかくどの人も華やかでハイセンス、セレブリティのオーラが半端ないのだ。
仕事でなら、そういう場に立ち会ったこともあるけど、それはあくまで裏方としてだったから。
なんとなく場違いな感じが否めなくて居心地悪くて、自然と足どりは重たくなってしまう。
そんな私に気づかないまま、先に立って歩いていくライアンに、ゲストの一人が気づいた。
「Hey,Ryan!!」
「Hi, long time no see!」
あっという間に、彼は続々と集まってきた人に取り囲まれてしまって。
「How have you been?」
「Good to see you!!」
私は輪の外へ、押し出されてしまった。
早口の英語は、ほとんど聞き取れないけど。
笑い交じりのその会話には、初対面にはない気安さがあり、親しい間柄であることが伺える。
こんなセレブたちが、みんな彼の……友達?
嘘でしょう……?
私は半ば放心状態で、別世界のような光景を外側から眺めていた。