カボチャの馬車は、途中下車不可!?

地中海をイメージしたらしい開放的なレストランの中を進み、通されたのは、奥まった個室だった。
間接照明がムードたっぷりに照らし出す室内には、2人分のテーブルセットだけ。

ドアが閉まると、外の賑わいは一気に遠のき。
代わりに、静かなクラシック音楽が室内に満ちていく。

あのセレブたちと一緒に食事するのかなって、ちょっと緊張していた私は、ホッと息を吐いた。

「さぁどうぞ」
彼が引いてくれた椅子へ、素直に腰を下ろす。

ようやく深呼吸する余裕ができて、外に目をやれば……

気づかないうちに船は出発していたらしく。
大きくとられた窓から、少しずつ移っていく対岸が見えた。

それは、まるでイリュージョンのようにファンタジックな景色で。
うっとり、ため息がこぼれてしまう。

「マユミは何が好きかな」

声がして視線を戻すと、彼がメニューを広げていた。

「あ……お任せしていい? 好き嫌いはないから」
お願いすると快く頷き、
「おすすめは、シーフードなんだよね」なんて言いながら、メニューをたどっていく。

その様子を見ながら、私は漠然とした予感が、確信に変わっていくのを感じていた。


取り巻く人たちは、明らかにセレブだし。
お金にも不自由してないみたいだし。
それに立ち居振る舞いにも上品さっていうか、育ちの良さが滲んでる気がする。そんなもの、昨日今日、付け焼刃で身につけられるものじゃないわよね?

もしかして……彼って、本物の御曹司?
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