カボチャの馬車は、途中下車不可!?

そりゃ、場所が違えば、使う素材や調味料、作り方は違うし、味だって違う。
和食だってそうなんだから、きっとフレンチだって……

「フランスの郷土料理って……おもしろそう」
ぽつりと言うと、ライアンが微笑みながら頷いた。

「おもしろいよ。ノルマンディーやフランドル地方みたいに海に面した土地と、内陸部のブルゴーニュじゃ、特産のワインやチーズもそれぞれ違うし……そうそう、大西洋と地中海じゃ、とれる魚介類も違うしね……って、マユミ?」

はたと、動かしていたペンを止めた。

「何してるの?」

きょとんと聞かれて、思わずポリポリ、頭をかきながら手帳を隠す。

「えーっと……なんか、おもしろそうな話だったから、仕事につなげられないかなと思って」

「仕事に?」

「そう。家庭料理なら、それほど難しいレシピじゃなさそうでしょ? だから、それをカードにまとめて、スーパーに置いてもらうとか。フランスの地方料理の蘊蓄もワンポイントメモみたいな感じで添えて。レシピ本にしてもおもしろそうだし、あ、キッチンアイテムとか、テーブルコーディネートの方向にだって広げられるかも!」

忘れないうちにと、再びカリカリ、メモを取る。

うん。いいかも……。

提案するなら、どこがいいかな。
食品系……フレンチと相性がいいところ……ええと……

夢中で考えていたら。

その時、ふと。
目の前の彼が、テーブルにしがみつくようにして笑いをこらえていることに気づいて。
手帳へと前のめりになっていた体を起こした。
「どう……したの?」
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