カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「初めてだ……くくっ」

「初めて?」

「っ……僕と食事してる時に、仕事のこと考える女性って……そんなことされたの初めてだ」

あ……

しまった……と、ぎこちなく手帳を閉じる。

時々、あるのよね。
いいアイディアが浮かぶと、時間も場所も吹っ飛んじゃうこと。

仕事と結婚してるって、揶揄われるのもそのせいだし。
元カレとも何度か、それが原因でモメた。

うぅ……彼もきっと、面食らっただろうな。

「ごめんなさい」

でも——
ライアンはみじんも機嫌を悪くした様子はなく、「責めてるんじゃないよ」ってぴくぴくとまだおかしそうに肩を揺すってる。
「ハマるって、こういうことか」

「え? 何? ハマる?」

「ますます君が気に入った、って言ったんだよ」

ちらりと。
意味ありげな視線が飛んで。


とくんっ……——

不自然に飛び跳ねた心臓から意識をそらすように、私はごそごそと手帳を片づけた。
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