カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「料理に感謝しないといけないな」
しみじみした口調に、「え?」と顔を上げた。
エレガントな仕草でスープ皿へスプーンを落としたライアンが、優しく私を見つめてる。
「緊張、ほぐれたよね?」
「あ……」
気づいてたんだ……。
セレブに囲まれて、委縮してしまっていたこと。
気まずい思いとともに、「ごめんなさい」と頭を下げた。
「なんか、ああいう雰囲気って慣れてなくて」
「うん。そうだろうと思った。でもリラックスしてくれていいんだよ? 今夜の主役は君で、全部君のために用意したデートなんだから」
「ぜ、全部?」
「そうだよ。この船もね」
「ふ……船っ!?」
「そう。今日のために香港に停泊してたやつを呼び寄せてさ」
「ええっ!?」
まさかそこまで、と青ざめた私を見て、彼は爆笑した。
「それはさすがに冗談だけどね」
「ひ、ひどいっ私一瞬っ……」
「あははっ……本気にした?」
目尻にきゅっと皺を寄せて。
してやったり、っていたずらっ子みたいにケラケラ、無邪気な調子で笑う。
「もうっ」って、そんな彼を睨んでみたけど……
なんだかこっちにまで笑いが伝染しちゃったみたいで。
「ぷぷっ……」
いつの間にか私も、笑ってしまっていた——