カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「実はね……あなたのこと疑ってたの。御曹司だっていうの」
スプーンを手に取りながら正直に言うと、麗しい眉がぴくりと反応した。
「あぁ、嘘だと思ってた?」
「ごめんなさい」
「かまわないよ。僕がマユミでも、きっと一度は疑っただろうから。たぶんそれって、お互いのことまだよく知らないからだよね」
「あ……確かに、そうかも」
私は頷いた。
新しいクライアントを開拓する場合も、リサーチは必須だもの。
情報があれば、気持ちにも余裕をもって接することができるし。
「だから、今日はたくさん話そう? 僕のこと知ってほしいし、マユミのことも、もっと教えてほしいな」
「え、と……うん」
答えてしまってから、どうしよう、と唇を噛んだ。
ちょっと、妙な展開になってきたな。
こんなに長い時間、一緒に過ごす予定じゃなかったから……
メールの内容と違ったこと話したら、変に思われるわよね。
気を付ければ……大丈夫かな?
「じゃあ、さっそく僕から聞いていい? マユミの仕事のこと」
キラキラした笑みを浮かべて、彼が身を乗り出してきた。
……仕方ない。
どうせ、今夜だけなんだもの。
深く考えるのはやめよう。
半ば押し切られるように、「どうぞ」って頷いた。
「忙しいってメールに書いてあったけど、やっぱり残業は多いの?」
「残業? うーん……そうね、時期によるけど……最近はコンプライアンス厳しくなってるし、うちは上司が残業反対派だから、そこまで無理をすることは……」