カボチャの馬車は、途中下車不可!?
はぁああ……
広大なオープンデッキ上、手すりにもたれながら、私は大きく息を吐きだしていた。
アルコールに浸された体はまだ熱っぽくて、海風が気持ちいい。
少し頭は重たくて気怠いけれど、不快に感じるほどじゃなかった。
今夜の月は、銀の羽根みたいな細い三日月。
今の私の気分みたいに、吹けば揺れてしまいそうなほど頼りなく漂うそれを見上げながら、もう一度、ため息をつく。
「参ったな……」
唇からこぼれたのは、想像以上に弱々しい声。
だって——
楽しかった……のよね。本当に。
王子様とのディナーは、掛け値なしに楽しかった。
一日で終わらせてしまうのは、惜しいと思ってしまうほど。
御曹司、って言葉に付きまとう独善的なイメージを裏切って、言葉にも態度にも、全然えらぶったところはなくて聴き上手で。
最初は、バレるんじゃないかって、ちょっとびくびくしてたんだけど。
彼がうまく相槌を打つもんだから、途中からマユミのこともアプリのことも、意識するのを忘れてしまって。
促されるまま、自分のことや仕事のこと、たくさん話していた。
もちろん、そこまでまずいことは言ってない、と思う。恋人のこととか……