カボチャの馬車は、途中下車不可!?
ボーーーーーーーーッ
間近で汽笛の音がして、びくっと飛び上がった。
視線を飛ばせば、出迎えの車の列が、もうはっきりと見える。
あぁ……もう終わっちゃうのか。
シンデレラが12時の鐘をきいた時も、こんな気持ちだったのかな……
って、なな何を妙なこと、私ってば!
年を考えなさい、としをっっ!
「も、もうそろそろ着くね」
乙女チックな思考を振り払うように手すりから手を離した瞬間——
ぐっと腰を引かれ、強い腕に抱きすくめられていた。
「ちょ、っと、ななにすっ……」
「マユミの彼氏って、どういう奴?」
「や、放し……っ」
抵抗は、いとも簡単に封じ込められ。
慌てふためく私をあざ笑うかのように、彼の片手が首筋から肩甲骨へ、ことさらゆっくり撫でていく。まるで服の下、素の肌を確かめるような官能的な動きに、背筋が粟立った。
「ライア……っ」
「妬けるよね。そんなにさ、いい男なわけ? 僕よりも?」
「それ、は……」
答えられるわけ、ない。
「……上、見て」
抗う間もなく、顎をすくわれ上向かされて。
熱を帯びた深緑の双眸に捕らえられる。
動けなかった。まるで、魔法をかけられたみたいに——
「ね……僕に、溺れてみない?」