カボチャの馬車は、途中下車不可!?

メタリックの箱の中。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれたけど、今日は気にならない。ふふって、唇から笑いまでこぼれてしまう。

——無理ですっ、南さんみたいな美人、ボクには高嶺の花すぎますっ!

とかなんとか言ってたくせに、あの草食男子め。
紹介してから、まだそんなに経ってないはずだけど、もうプロポーズとは。
かなりがんばったじゃないの。
実は隠れ肉食だったか。


よし、ここは頑張ってスピーチしないとね。
どんなこと話そうかなぁ……。

香織ちゃんの同僚ってことは、総務の子たちもくるわけでしょ。
うわ、先月スピーチしたばっかりだ。
内容、早めに練っておかなくちゃ。同じことは話せないし……


超高速で変わっていく階数表示を眺めながら考えていると。


チン……

軽い音を響かせて、目指す20階にエレベーターが止まった。
なめらかに開いていくシルバーのドアに向かって、私は足を踏み出し——


「おっはよーございますっ!!! 飛鳥さぁん!!」

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