カボチャの馬車は、途中下車不可!?

理性がようやく戻ってきて、霞がかっていた思考を動かし始める。


いけない。
これ以上は、進んじゃいけない。


私は思いっきり腕を突っ張って、彼の動きを制止した。


「マユミ? ……手、離して。今更止める気はないよ?」

「違うの、……あの、ね、シャワー、浴びてきて」

「必要ないだろ? もう待てない」

抱こうとする手から逃れて、夢中で首を振った。
「あなたの髪から、磯の香りっていうか……海の匂いがするの」

「…………」

「な、なんか、船酔いしちゃいそうで……だから、ね? お願い」

なんとか、ねだるような声をひねり出す。

「…………」
不満げに眉をひそめたライアンだったけれど……


やがて、諦めたみたいに、「OK」と天井を仰いだ。
「じゃ、少し待ってて」


彼の姿がすりガラスの向こうに消えて。
水音が響き始めて——

私は一気に、はあああっと息を吐きだした。

よろめくようにベッドへ腰を下ろして、膝を抱えこむ。
あ、危なかった……。
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