カボチャの馬車は、途中下車不可!?


どくん、どくん、どくん……


お、落ち着け。
とりあえず落ち着こう、私。

いい年した大人が、三十路突入した女子が、
たかだかホテルの部屋で男と2人きり、ってくらいでジタバタしてどうするのよっ?


必死で抑えようとすればするほど……逆に鼓動は乱れ散って。
こういうシチュエーションがいかに久しぶりで、どれほど自分が動揺してるのか、思い知らされる。

甘かった。
ほんっと、甘く考えすぎてた。

もっとスマートに、さらっとかわせると思っていた自分を大声で笑ってやりたい。


バスルームのガラス越しに見え隠れする、長身の影を目で追っているうち、私を抱きしめた、広い肩、固い胸板の感触を思い出してしまって、頬が火照っていく。

「ぅうぅ……っ」
寝転がって呻いた。
まさか私、欲求不満っ?

ジリジリと疼くような熱を帯びた唇に指を這わせれば、そこにはまだキスの余韻が、彼の舌の感触が、濃く残ってる。
< 86 / 554 >

この作品をシェア

pagetop