カボチャの馬車は、途中下車不可!?
どくん、どくん、どくん……
お、落ち着け。
とりあえず落ち着こう、私。
いい年した大人が、三十路突入した女子が、
たかだかホテルの部屋で男と2人きり、ってくらいでジタバタしてどうするのよっ?
必死で抑えようとすればするほど……逆に鼓動は乱れ散って。
こういうシチュエーションがいかに久しぶりで、どれほど自分が動揺してるのか、思い知らされる。
甘かった。
ほんっと、甘く考えすぎてた。
もっとスマートに、さらっとかわせると思っていた自分を大声で笑ってやりたい。
バスルームのガラス越しに見え隠れする、長身の影を目で追っているうち、私を抱きしめた、広い肩、固い胸板の感触を思い出してしまって、頬が火照っていく。
「ぅうぅ……っ」
寝転がって呻いた。
まさか私、欲求不満っ?
ジリジリと疼くような熱を帯びた唇に指を這わせれば、そこにはまだキスの余韻が、彼の舌の感触が、濃く残ってる。