カボチャの馬車は、途中下車不可!?
きぃいいん……
ハウリング起こしそうな甲高い声に、「ひぃっ」と両耳をふさいだ。
「飛鳥さんっ飛鳥さんっ! お待ちしてましたぁ!」
くるんとツインテールを揺らした10代にしか見えない女子が、エレベーター前で敬礼しながら立ってる。
営業アシスタントの篠木羅夢(しのきらむ)ちゃんだ。どうやら私を待ち伏せしていたらしい。
まったく、どこの劇団の発声練習なのよ……。
「お騒がせしてすみません」って周囲へ頭を下げながら、廊下へと出た。
「おはようございますっ! 飛鳥さん!!」
「うん、おはようラムちゃん。あのさ、もう少し声、小さくしようか」
「聞きましたよ〜!! またまた飛鳥マジック炸裂だったそうじゃないですか!」
目をキラキラさせた彼女は右から左。聞く気ゼロだな、こりゃ。
ゲンナリしながら歩き出した。
あれ?
飛鳥マジック……?
彼女の発したワードが、頭の片隅にひっかかった。