カボチャの馬車は、途中下車不可!?
彼の長い指に挟まれているもの。それは……
「嘘、でしょ……」
私の社員証だった。
パチパチっと。
途切れていたシーンが、フラッシュのように瞬いて、つながっていく。
連れ込まれたホテルの部屋。
重なった唇。
落ちたクラッチバック。
……散らばった、中身。
じゃあ、あの時?
——なぁ、あれって営業第一の真杉?
——うそ〜もしかして恋人?
——えー真杉さんの彼氏!? 超いい男ぉ! ハリウッドの俳優みたーい!
周囲の声が聞こえてきて、ハッと我に返った。
今日の彼はダークスーツ姿で、前回より幾分日本のビジネスシーンに溶け込んでいたけれど。
そんなことで、彼の駄々洩れるオーラが薄まるはずもなく。
当然のとごく、めちゃくちゃ注目を浴びている。
もちろん、私ももれなく一緒に、だ。
そのことに気づいて。
「ああありがと」ってどもりながら、急いで社員証をつかんだ。
でも、彼は手を離さない。
「え?」
そのまま社員証ごと、強引に引き寄せられる。