カボチャの馬車は、途中下車不可!?
——きゃああっ!
周囲から飛び出した熱いため息と悲鳴の嵐を気にするそぶりも見せず、そのまま踵を返した。
彼、今……なんて言った?
覚悟って……どういうこと?
「飛鳥さん飛鳥さんっ!」
ものすごい勢いで、ラムちゃんが飛びついてきた。
「ああああれは誰ですかっ!! 誰!? ずるいですよお! こっそり抜け駆けなんてええ! あんなすごいイケメン、どこで知り合ったんですか!? 仕事がらみですか!? ねえねえ! まるで王子じゃないですかっ王子、リアル王子っ! あぁっ軍服着せたいっサーベル持たせたい〜っ!!」
興奮しきった声が、遠のいていく。
一体……何が、どうなってるの……?
一晩だけじゃ、なかったの?
くらりと。ふらつく足を踏ん張って、呆然とその後姿を見送る。
頭の奥、どこかでチカチカとシグナルが瞬いた。
何かを知らせるように。
もしかして私は。
想像以上に危険なゲームを始めてしまったんじゃないだろうか。
会場は、途中下車ができない特急列車の上。
終点にたどりつくまで、私はゲームから降りることができない。
どこへ向かっているのか、どんなコースをたどるのか、
誰にもわからない。予測できない。
そんな、危険なゲーム——
確かな予感に震えだす自分の体を、私はぎゅっと抱きしめた。