新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
 

「桜が最善だと思える選択をしてほしい」と、続けた湊を前に、今度は私がキョトンと目を丸くする番だった。

会社での苗字を如月にするか、花宮にするか……。

すぐに言われたことの意味を理解して、慌てて首を横に振った。


「も、もちろん、旧姓の花宮でお願いします……!」

「……どうして? もしかして、俺の妻だとバレるのが嫌だとか?」

「そ、そんなことあるはずないです……! そりゃあ、湊が旦那さんだって、私は未だに信じられないけど……。でも、夢じゃないなら世界中に自慢して廻りたいくらい、湊は最高にカッコよくて、素敵な人だもの!」


言い切って、真っ直ぐに彼を見つめると、湊は視線を斜め下に落としてから自分の口元に手を添えた。

そして何故か深く重たい息を吐き、私をチラリと窺った。


「湊?」

「今のも……結構、キタ」

「え?」

「こんなに愛しくてたまらないのに、桜を抱けないなんて……生殺しにも、ほどがある」

「……っ!」


「ハァ……」と、再び力なく息を吐いた湊は、私の肩に頭を乗せた。

ふわりと頬に触れた彼の髪が私の心をくすぐって、必然的に顔が熱を帯びていく。

 
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