新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
それじゃあ湊が私のためにと周囲の人たちに口を閉ざすように言ったのに、まるで意味がなくなってしまう。
そして何よりも、私は……。
「私は……贔屓目で見られるのは嫌です。だから、Lunaでは、湊の妻の"如月 桜"ではなく、誰よりも下っ端の"花宮 桜"として、イチからジュエリーと向き合いたいと思っています」
周りの人たちに比べたら私は経験不足の新入社員だ。
だから最初は雑用だってなんだってやって、必死に先輩たちに食らいついていくつもり。
「それに、私は……湊の妻かと聞かれて、たとえ嘘でも"いいえ"と答えるのは嫌です。そんなことしたら……ホントに、この素敵な夢から醒めてしまいそうだから」
言いながら、私は湊のシャツをギュッと掴んだ。
この自信のなさは、いつか解消される日が来るのだろうか。
そう、不安に思いながらゆっくりと頭を持ち上げれば湊と至近距離で目が合って、思わずドクリと胸が鳴る。
「私……少しでも湊の役に、立ちたいんです」
「それ……殺し文句だってわかってる?」
「え……」
「面と向かってこんなことを言われて、平気でいられるほど俺の理性も頑丈じゃない……。本当は今すぐにでも、桜は俺のものだと世界中に触れ回りたいくらいだけど……」
「ん……っ」
今日、何度目かもわからない彼の唇が、私の唇に優しく触れた。
背中に触れた手のひらは大きくて、私を強く支えてくれる。