新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「 いただきます 」
「出社したら、まずは社長室に来てくれ。そこで秘書の近衛を紹介する」
月曜日の朝。
ふたり揃って家を出た私たちは、マンションのエントランスの前で別れた。
湊は地下駐車場へ、私は徒歩五分のところにある最寄り駅へと向かうためだ。
「本当に大丈夫か? ここから本社までは二駅だが……朝の通勤ラッシュには、確実にぶつかる時間だ」
心配そうに私を見る湊はギリギリまで、手を離そうとはしなかった。
満員電車に乗る私を心配してくれているのだと思うけれど、それは少し過保護すぎる。
「大丈夫です。今までだって電車通勤でしたから満員電車も慣れっこだし、私、こう見えて結構根性あるんですよ」
湊を見上げてイタズラっぽく微笑めば、彼は一瞬、呆れたように小さく笑った。
「桜が電車通勤するなら、俺も一緒に電車で行こうか」
「それじゃあ、意味がないですよ。ふたりでいるところをLunaの社員さんに見られたら困るから、私たちは別々に出勤するのに」
思わずクスクスと笑みを零せば、湊はとうとう諦めたように「わかってるよ」と息を吐いた。
Lunaでは夫婦であることを秘密にすると決めた以上、私と湊が一緒に出勤するわけにはいかない。
湊の運転する車に私が乗り降りするところを社員の誰かに見られたらアウトだし、そうなったら彼がせっかく用意してくれた、"花宮"の社員証も無駄になってしまうだろう。