新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「Lunaに着いたら湊が教えてくれたとおり、八階にある社長室に向かいます。私、精一杯頑張るので、今日からどうぞ、よろしくお願いします」
再び彼を見て微笑むと、湊の手が私の肩を引き寄せた。
そして、額にそっと触れるだけのキスをされ、耳元に唇を寄せられる。
「桜が望むとおり、会社では、桜のことも他の社員と同等に扱う。だけど、困ったことがあればいつでも頼ってくれていいから必ず連絡するように」
「でも……」
「大丈夫。なるべく俺達の関係が勘付かれないように善処する」
言いながら今度はイタズラに湊が笑って、ギュッと身体を抱き締められた。
逞しい胸に頬を寄せると鼓動が優しく鼓膜を揺らし、私は彼の腕の中で深呼吸をして瞼を閉じる。
──がんばろう。
私はもう一度、自分の夢に手を伸ばすんだ。
私を信じてくれた湊の想いにも、精一杯応えたい。
「それじゃあ、またあとで」
名残惜しそうに離れた手の温もりを抱き締めるように、私はそっと胸元で光る桜のチャームに手を添えた。
そのまま踵を返して歩き出せば、柔らかな風が吹いて、静かに背中を押してくれた。