新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「あ。そういえば、ハナちゃん先輩はどうなんすか?」
「え?」
「彼氏、いるんすよね? だって、そのいつもつけてるネックレス……彼氏さんから貰ったものとかっしょ?」
懐かしい記憶に想いを馳せていた私は、サツマちゃんの唐突な言葉に我に返った。
数回瞬きを繰り返せば、クリクリとした大きな目が私の様子を伺っている。
細い人差し指は、私の胸元で光る桜のチャームがついたネックレスを指していた。
自然と動いた私の手はチャームに触れて、思わずそれを握りしめる。
「こ、これは──」
「えー! ハナちゃん、彼氏いるの!? ショックーゥ」
「いや、いるっしょ。寧ろ、いないと思ってたカブさん、ヤバイよ」
勢い良く頭を上げたカブくんを、再びサツマちゃんの呆れたような声が一蹴する。
かくいう私は咄嗟に頭を悩ませて、返す言葉に詰まってしまった。
……彼氏、というか、すでに結婚しているんだけど。
でも、それを言ってしまって良いのかわからない。
湊とのことは社内では彼の秘書である近衛さんしか知らないことだし、私自らが湊との結婚を社内では秘密にすると決めた以上、バレるわけにはいかないのだ。